「血涙 新楊家将」(北方 謙三)  読了

血涙 新楊家将」(北方 謙三)読了しました。
(武之介評価:★★★★


「楊家将」の続編となるこの作品は、楊業が死んだ以降の話になります。
味方の裏切りによって大黒柱を失った楊家軍は壊滅。
主立った将校や楊家の人間達の大部分が戦死という壊滅的な状態から、残された楊業の息子・六郎が楊家軍を再興していきます。
「味方の裏切り」
によって壊滅した経緯から宋という国に対する複雑な思いを抱きつつも、楊家の誇りを全うすべく、軟弱な宋軍の要となって宿敵・遼に対峙する。

かたや遼国においては、記憶をなくした元宋軍の将校・石幻果が、猛将・耶律休哥の庇護の元で受け入れられ、やがて遼軍の一翼を担う将校にまで成長する。
妻をめとり子をなして、恩人でもある耶律休哥を父と仰ぎ、宋国に対して巨大な敵として立ちふさがるも、無くした記憶を取り戻したことにより
「楊家と遼」
という二つの間で揺れ動くことになります。


楊家軍という最強の軍団を抱えつつも、味方には信用されず(表面上のみは協力されるが)、死兵として扱われることを覚悟しなければならない六郎。
宋国に思うことはあれど、楊家という誇りが、六郎を宋に縛り付ける。
そういう事があってか、楊家軍の描写は何となく暗くて寂しげなところが非常に多かったように思えます。
宋国における楊家軍の重要さが増せば増すほど
「宋にとって楊家軍とは何なのだ?」
という問いが常につきまとうようになっていく。
楊業の居た頃の華々しい楊家軍の姿を読んで知っていただけに、この変貌ぶりは、驚きと共に寂しさ悲しさといった寂寥感めいたものが感じられました。

この楊家軍最大の宿敵として描かれる耶律休哥と石幻果はまったく逆。
すべてを失った男・石幻果が、遼国内において少しずつ自らの存在意義を確立していく様は、生き生きとしてすべてが前向きのように捉えられました。
恩人を父と仰ぎ、妻と子のため軍務に励む。
最初は信頼されていなかったものの、実力をもって信頼を勝ち取り、耶律休哥亡き後は、遼にとってかけがえのない人物へと変わっていく。
この
「宋と六郎」
「遼と石幻果」
というまったく正反対の関係が場面展開と合わせて交互に描かれてくるため、より一層二人を比べてしまうんですよね。
そしてそこに絡んでくる「楊家」という大きな存在。
楊家を担う人間と楊家を捨てた人間という二つの異なる人間のストーリーの対比が、この物語の中核であり、一番の面白い部分なのでしょう。


読み終えた後ならば分かるのですが、同じ0からの出発(軍の再興、記憶をなくした人間)というにも関わらず、
「なぜあのような経緯を得ることになってしまうのか?」
「なぜあのような結末を迎えてしまうのか?」
と思えて仕方ありません。
なんとも不憫・・・そう不憫という言葉以外にはちょっと見つからないほど、楊家というものに同情してしまいました。
楊家という宋国に運命を翻弄された一族に対する無情さが嫌というほど感じられましたね。




楊業、楊六郎を経て、後の水滸伝の人物である楊志、楊令と繋がっていきます。
これだけ楊家というものを物語の主軸として取り上げているということは、作者は楊家というものに対して、もしかしたら特別な思い入れがあるのかもしれませんね。

水滸伝シリーズを読もうと思っておられる方がもしいらっしゃるなら、まずはこの「楊家将」を先に読むことを絶対オススメしますよ!!




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Comment

[1872]

本作は未読なので、なおさら読みたくなってしまいましたよ(笑)。


精強すぎる兵団が疎まれるようになるのは、
銀英伝のロイエンタールも同様ですが、
強者の悲しみというのは、歴史物語のテーマとして、
悲劇としても魅力的ですなぁ・・・。



[1873] 楊家将、水滸伝

■ 瑞閏殿
この楊家将、水滸伝シリーズは、どうも読んだ限り
「楊家」
というのをキーポイントにして描いているように思えますね。
原作のほうではそれほど重く扱われていない楊志を、作品内であれほど持ち上げて描いたのには、その辺りに理由があるように思えます。

「精強すぎる兵団が疎まれる」
というのは、歴史においては多々見られることでもありますね。
悲劇としての魅力もあるから、なおさら読んでいて面白いです。

それだけに水滸伝シリーズの爽快感とは違った面白さ、そして物語の雰囲気を「楊家将」では感じることができると思いますよ!
「水滸伝」もラストを読んだりすると、似たような思いにかられますけど。

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